特別インタビュー科学的怠慢に満ちた国の新型コロナ対応
October 15, 2022
医学情報 【 特別インタビュー科学的怠慢に満ちた国の新型コロナ対応 】
★ 福島雅典京都大学名誉教授【 ふくしままさのり 】
1948年生まれ、1973年名古屋大学医学部卒業、1978年愛知県がんセンター・内科診療科医長。
1994年には世界中の医療従事者が信頼を寄せる診断・治療マニュアル「MSDマニュアル(旧メルクマニュアル)」の翻訳、監修。
2000年から京都大学医学部教授、附属病院外来化学療法部長。
2013年から神戸医療産業都市の先端医療振興財団・医療イノベーション推進(TRI)センター長などを歴任。
2021年アカデミア発の臨床研究の推進などを目的とした一般財団法人「LHS研究所」(名古屋市)を設立。
7月23日の協会政策研究会では、福島先生に「新型コロナウイルス感染症について科学的な分析が為(な)されていない」というテーマで……
① 第7波の感染爆発から見てワクチン接種の有用性・有効性について検討が必要、
② 接種後の死亡事例について全数徹底調査すべき、
③ 地域の実情にあった対策づくりが大切、
④ 感染防止の基本原則遵守・診療ガイドラインの普及・感染経路の調査、という貴重なご講演をいただきました。
オミクロン株対応ワクチン接種が始まるという報道を前に、先生に改めて現時点の研究報告を元にお話をお聞きしたいと思います。
日常診療の中で思考停止に陥らないよう、医学・倫理的、現場の実態・意見、社会思想史的・歴史的に見ていく必要があると考えます。
★ 福島 : 全く同感です。
先ず、医療上どう対処するのかを原点から考えなければなりません。
ペスト、コレラなど疫病史の中で確立した三原則は、検疫、消毒、隔離、に尽きます。
今回の感染拡大の初期段階でこれに成功したのは台湾ですが、日本政府は全く学ぼうとしませんでした。
中国・武漢での初期対応のガイドラインに沿って、私は直ぐに基本的なことを論文に纏(まと)め、各方面に提言を行いました。
◎ 西山 : ガイドライン、提言の具体的なポイントは、どういうことでしょうか。
★ 福島 : 2020年初頭に新型コロナウイルス感染症が日本に上陸した当初から、病態を見れば、間質性肺炎を防ぐことが治療の鍵であることは分かっていました。
中国のガイドラインには、エキスパートの意見として、適切な時期の予防的ステロイド投与が効果的であることが示されていました。
◎ 西山 : 初期の頃はマスクもアルコールも不足で、診断も治療も確立しておらず、まさに裸で戦場に行くような不安の中で診療していました。
★ 福島 : 私の腫瘍内科の経験からも、既に80年代初頭から半ばにかけて悪性リンパ腫治療後の間質性肺炎が問題となり、同様の結論に辿り着きました。
その点では、中国のエキスパートの見解は、私の臨床経験に合致するものでした。
つまり、サチュレーションが95%以下だったらCTを撮り、浸潤像があったらステロイドを使う、そうすれば間質性肺炎は防げる。
日本でもそれに基づき早期にガイドラインが整備され、時々の知見を加えて、今や世界最高水準になっています。
こうした実績を正当に評価せずに、浮足立つ社会状況は度し難いと思います。
【 医学者の研究成果を生かしてこそ 】
◎ 西山 : 問題はそうした医療提供をする仕組み、体制だと思うのですが。
★ 福島 : そうです。
ガイドラインに基づく安定的な医療供給には、COVID-19専門診療センターの設立が必要でした。
地域毎(ごと)に廃校になった学校を、病院に転用すればいいのです。
学校は窓を全部開けて換気ができますし、教室を病室に、給食室を調理場にすることで容易に病院に転換できる構造です。
医療圏単位で発生患者数・重症者数のデータは揃っており、必要設備、人数を割り出せば、設置基準が分かります。
また、これに基づき、行政機関と医師会・基幹病院・特定機能病院から構成する協議会が、地域のリソース状況に応じて医師・看護師等の派遣を行います。
スチューデント・ドクターやナースも関与させれば、最高の実践経験の場にもなります。
日本の医療水準や国力からみれば、その気になれば十分可能です。
今後の災害にも対応できる予備病院が、街にも郊外にもあるという医療提供体制をつくる絶好の機会でもありました。
私は初期の段階からこれを主張し、厚生労働省などにも提言していましたが、政府は全く動こうとしませんでした。
▲ 広川 : 通常では症状があって受診、そして、診断、治療です。
しかし、今はとにかく抗原検査、とにかくPCR検査、適切な表現ではないのかも知れませんが「コロナかコロナでないか」に重きが置かれ、通常の医療に手が回り切らない現状であることを聞きます。
★ 福島 : それが「医療崩壊」の最たるもので、大問題です。
つまり、コロナ対応を普通の診療体制の中でやるから、一般診療がおざなりになる。
愚の骨頂で、初めからCOVID-19専門診療センターをつくって、開業医の先生方と機能分担すれば良かったのです。
保健所がこの大規模な感染者の管理、療養指導をできるはずはありません。
先述した間質性肺炎も、スペシャリストでないと対応できません。
それが100人に一人二人と起こるのだから、今、言った体制を取らないと無理で、通用しないことをやり続けているのが大きな問題です。
◎ 西山 : そうした状況の中で政策に反映させるのは、困難ですね。
★ 福島 : 2021年に、私は臨床家からの提言も行いました。
その要点は、第一に医学者の重要な研究成果を十分に生かすこと。
第二に、現場の医療状況把握はもとより、医師の率直な声を生かすこと。
第三にPCR陽性と診断された方への医療的な配慮をすること、これは保健所対応では無理です。
第四に戦略的科学研究、研究開発をすること、つまり、「ワクチンをつくれ、つくれ」は方向性が違います。
そして、第五に感染防御三原則の実施を周到、かつ綿密に徹底して実施すること、この5点です。
◎ 西山 : 非常に重要な指摘ですね。
基本的なことが不十分であることが、分かります。
★ 福島 : 日本経済新聞が、「日本は新型コロナウイルス関連の論文が少ない、存在感が薄い」という記事を書きました。
ネイチャーのアジア・オセアニアのトップからも私に、「日本のコロナ関連の論文数が少ない、どういうことか」と質問がありました。
それに対して私は「日本は死亡率が著しく低いので、それと相関している。
治療プロトコールは確立しており、大学の先生方はガイドラインで適切に対応している限り問題視していない。
しかも、問題は数ではなく、日本の研究者は重要な論文は出している」と回答しました。
▲ 広川 : 課題、テーマも内容についての言及もなく、論文の数だけで通り一遍に評価をするのは、表層的で正しくない見方だと思います。
★ 福島 : そうです。
例えば、感染防御関連でも、早い時期に五つの重要論文が発表されています。
唾液検査で十分な感度と特異度で精度高く検出できること(北海道大学・豊嶋崇徳教授)、不顕性感染者の自然経過の特徴(藤田医科大学・土井洋平教授)、遺伝子が大幅に変わる中でのゲノム解析の導入の必要性(慶應義塾大学・小崎健次郎教授)、年齢別患者数と死亡リスク(国立感染症研究所)、人の皮膚上の新型コロナウイルスの生存期間(京都府立医科大学・廣瀬亮平助教)。
これらの重要研究成果を生かすには複数の臨床医を中心とする感染対策の司令塔が必要ですが、提言をしても政府は全く応じようとしませんでした。
基本である換気と、安静・栄養で免疫を高めることなども、全く強調されませんでした。
その一方で「飲食店の営業時間を短くせよ」「出歩くのを避けよ」など、ヒステリックなことばかりアナウンスされる。
ほとんどの人は、その程度の常識は持っています。
そんなことでなく、サイエンスを適切に適用する姿勢こそ必要なのです。
【 ワクチン一辺倒の戦略の愚策 】
▲ 広川 : そうした中で、ワクチンの新しい接種がアナウンスされる、マスコミが安全性・有効性の情報について識者や国民の賛否両論様々な意見を紹介せず、政府の方針をそのままに報道する。
これでは、報道機関の役割が十分に果たせていないのではないかと思います。
★ 福島 : そもそも、変異を繰り返すウイルスに、ワクチン一辺倒で対応する戦略が愚策です。
私は論説記事に「こうした戦略で新型コロナウイルスが抑え込めると考えるのは妄想である」と表現しました。
日本の状況は異常で、ワクチンを接種しない人へのハラスメントまで起こっています。
▲ 広川 : 残念ながら、これは彼方此方(あちこち)で聞かれる話で、自分の決定は強制されるべきでなく、個々の自己決定が支えも守られもしない。
とても大きな問題だと思います。
★ 福島 : しかも、厚労省が定期的にアドバイザリー・ボードに報告している統計では、驚くべきことにワクチン接種者の方が感染率が高くなっています。
表をみれば分かりますが、10万人当たりの陽性者数は、50歳代、80歳代を除いた年齢層で「2回接種者」の方が「未接種者」に比べて多くなっています。
顕著なのは65歳から69歳で、新規陽性者数は「2回接種者」は3倍、「3回接種者」で2倍、其々(それぞれ)「未接種者」より多くなっています。
厚労省及びアドバイザリーボードは、国民に「何故、そうなっているか」を説明するべきです。
また、感染率が下がっていないデータは百歩譲って脇に置いても、本当に重症化率と死亡率が下がっているのか、明らかにするべきです。
この点の解明を求めて、厚生労働大臣に公開質問状と情報開示請求をしました。
◎ 西山 : そもそも、このデータが非常に乱暴で、検証も困難なように思います。
例えば、接種日が不明なので、効果が表れるまでのタイムラグなども考慮が必要です。
何(いず)れにしても感染者数と行動制限やワクチン接種の時期を素直にみると、本当にどういう効果があったのか、極めて疑問だと言わざるを得ませんね。
★ 福島 : 仰(おっしゃ)る通りで、どう読むのかの限界もあります。
例えば、以前は「接種歴不明者」を「未接種者」に入れるなど雑なこともしていました。
ただ「接種したから感染率が下がったという事実はない」ことは言えます。
同じ資料からブレークスルー感染率を計算すると、「接種歴不明者」を除いた場合で未接種者を含めた新規陽性者99万3817人のうち、ワクチン接種者は74万1339人、何と74%にも上っています。
これを見ても、ワクチンに感染予防効果がないのは明らかです(22年8月15日~21日の期間)。
【 免疫系への影響疑い 】
▲ 広川 : 先日、開かれた兵庫県保険医協会の西宮・芦屋支部の世話人会で、「発熱外来の実感として、ワクチン接種の有無で有意差を感じない」「ワクチンを接種し続けても、感染者は増え続けている」「重症化防止のエビデンスも、ないのではないか」との意見が出されました。
お盆以降の極(ごく)短期間ですが、私が診察した患者さんの状況でも、抗原検査で20人陽性で、9割がワクチンを受けられた方で、4回目を接種してから1週間前後の2人が陽性でした。
★ 福島 : 開業医の先生方が実臨床の経験から「ワクチンが効いていないのではないか」との実感を持っているとの話は、非常に重要です。
そもそも「接種した人の方が陽性率は高い」ことは、免疫学的に重大なことを示している可能性があります。
▲ 広川 : ワクチンが効果を上げられないとするならば、そのワクチンそのものによる免疫機能の低下など、何らかの影響が及ぼされている可能性もあるのでないかという意見も聞かれますが。
★ 福島 : 天然痘のように安定したゲノムでなく、変化し続けるウイルスにワクチンで対抗すれば、耐性とのイタチごっこは目に見えています。
獲得免疫をブーストするのでなく、自然免疫でブロックする重要性にスポットを当てるべきです。
神奈川歯科大学の先生方が、唾液中のIgA抗体値が高い人が感染していないことを発表しています。
ワクチン未接種で未感染の人は、交差性のIgA抗体を持っていたとの研究結果です。
実は当初、日本人はそれを持っている人が多く感染が少なかった可能性がある、一つの仮説ですが、非常に説得的です。
しかし、その後のワクチン接種で、それが破壊された可能性があります。
そうなら、恐ろしいことです。
本来、経粘膜感染についてはIgAが主役、そこを強化することが重要で、まさに大気・安静・栄養が基本です。
そうしたことを考えず、ワクチンの頻回接種でIgGばかり作れば、抗体依存性感染増強が起こります。
何度も同じ抗原が入って来ると、生体の認識系が誤ってそれに対する抗体ばかりつ来るようになる。
こうした可能性も、立ち止まって考えるべきです。
とにかく、ファクツ(Facts)を整理して、そこから議論することが何より求められています。
【 重大なワクチン接種後の死亡事例 】
◎ 西山 : ワクチン接種後の死亡事例が多数報告されていますが、厚生労働省は全く因果関係を認めようとしていません。
▲ 広川 : 7月23日の先生のご講演で示された、厚生労働省発表の「新型コロナワクチン接種後の死亡として報告された事例の概要」では、死亡発生は接種2日後が最多で、主に1日~3週間あまりに亘(わた)って見られていました。
★ 福島 : 「薬を飲んで、いつもと違うことが起こったら薬の所為(せい)と考える」、これが薬害防止の基本姿勢です。
そもそも、COVID-19のワクチンは米国における早期臨床試験の結果が出た段階で、特例承認されたものです。
言わば、見切り発車で、安全性と有効性が十分確立していません。
しかも、現場の医師が「おかしい」と感じてわざわざ報告したものだけで、接種後の死亡が1779件(22年7月10日現在)、重大な事態です。
しかも、図のように2日後の死亡が突出して多く、その後なだらかに減っていく生物学的パターンが顕著に表れています。
これは、ワクチンと死亡の関連を疑うのに十分な根拠です。
関連がないなら、死亡日はイーブンになるはずで、こんな傾向は出ません。
原因も心血管障害が多数を占め、横紋筋融解を起こしていた事例が、既に世界中で25以上の論文に纏(まと)められています。
私の知っている日本の事例でも、28歳の人がワクチン接種5日後に亡くなり、剖検したら心臓の横紋筋融解でした。
普通ではありません。
にも拘(かか)わらず、評価委員会は「評価不能」を繰り返しています。
本来、評価委員会がすべきは、こうした「事実」に対して不誠実な姿勢を取らず、「因果関係が否定できない」と全数調査をかけることです。
これは科学上当然のことで、それを行わないのは科学的怠慢です。
今後、ワクチン接種者の中長期的な副反応を厳重に観測し、被害者調査、死亡者調査を、国が責任を持ってやるべきです。
▲ 広川 : ファイザーのワクチンについて、当初は感染抑制効果が言われていましたが、一定期間での「発症予防効果95%」は、今、全くその実感はありません。
また地域でも95%の意味について多くは正しく説明もなされず、理解もされないままのようです。
ざっと、4万3500人を半数ずつに分け、半数のワクチン接種した人とプラセボ接種の人の比較で、其々(それぞれ)「感染して発症した」人が8人と162人、これを比較して95%としています。
しかし、ワクチンを接種してもしなくても「感染も発症もしない確率」は99%以上になります。
★ 福島 : 今や陽性者も、大半が無症状、軽微な風邪で、感染はしていても不顕性感染かも知れない、単にそれだけのことです。
治療プロトコールは確立しており、陽性者数のみで大騒ぎするのは異常です。
しかも、これ以上の頻回接種は免疫に異常が生じ、将来どんな問題が起こるのか大変危惧されます。
データからも「ワクチン接種で感染し易くなっている」としか説明のしようがなく、「何の為の接種か」が問われています。
「モノ言えば唇寒し」で、皆が口を噤(つぐ)む中、先ほど紹介された現場の開業医の先生方の感覚が的を射ており、今こそ開業医の診療実感を纏(まと)めて欲しいと思います。
それができるのは、保険医協会しかありません。
【 科学的成果を生かす姿勢と仕組みを 】
▲ 広川 : 本日は、日常診療で重要な考える素材をいただきました。
漸(ようや)く、色んなことが分かって来ました。
厚労省からのデータ、研究成果を元に分かったことをベースに自分達自身の手応え・データを見ながら、考える一つの時期に来ているように思います。
◎ 西山 : 最後に、今の日本の体制上、科学的検証にどういう課題があるとお考えでしょうか。
★ 福島 : 例えば、日本版CDC(疫病予防管理センター)創設などという議論がありますが、全くナンセンスです。
そうした議論が起こるのは、抜きがたいアメリカ・コンプレックスです。
現にCDCは、アメリカ医療の困難を何も解決していません。
アメリカの医療は酷(ひど)い棄民政策で、既に平均寿命が下がり始めています。
日本は既存の仕組みで、アメリカより良く対応しています。
大学病院、特定機能病院には、データセンターが整備されています。
これを使ってランダム・サンプリングすれば、色んな傾向が分かります。
逆にワクチン接種後の死亡者などこそ、数が限定されているので全数調査すればいい。
既存の日本の行政の仕組みを使えば、何でもできるのです。
また、科学的議論をする場合は色んな知見を必ず論文に纏(まと)めて、然(しか)るべきピアレビューのあるジャーナルに掲載するべきです。
繰り返しますが、日本の医学研究レベルは決して欧米に劣りません。
問題は、そうした成果を生かしていく姿勢なのです。
▲ 広川 : 本日はご多忙の中、まことにありがとうございました。
先生のお話を、日常診療に活かさせていただきたく思います。
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