メディカルチェック

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

■緑内障

緑内障は目が正常な機能を保てる「適正な眼圧」以上の眼圧のために、視神経が障害され、視野が欠けてくる病気。
一度障害を受けた視神経は、再生することがないため、緑内障は失明する危険を伴う大変怖い病気といわれる。
しかし、実は、緑内障は、40歳以上の17人に1人がかかる身近な病気。
近年、緑内障は若年化・増加傾向にあるといわれており、早期発見、早期治療が大切なので、40歳前後の方は、一度眼科での検査をおすすめします。 ■緑内障の症状

緑内障は、視野が欠損したり、視力が低下しますが、タイプによりそのスピードは異なり、徐々に進むものと急速に悪化するものがある。
一般的に緑内障は、自覚症状がほとんどなく、知らないうちに病気が進行していることが多いようです。緑内障は、早期発見・早期治療が大切なのですが、初期段階では、自覚症状があまりないために、症状が進行してしまってから受診する方が多いようです。
緑内障の場合、視神経の障害はゆっくりと起こり、視野も少しずつ狭くなっていくため、眼に異常を感じることはありません。
急性の緑内障では、急激に眼圧が上昇し、目の痛みや頭痛、吐き気など激しい症状をおこします。

■緑内障の原因

緑内障の直接的な原因は、前房内の房水が隅角からうまく排出されず、眼球内の圧力が高くなること。 しかし、緑内障の直接の原因が眼球内の圧力が高くなったためとはいえ、ほとんどの緑内障患者はなぜ眼球内の圧力が高くなったのかという正確な原因がわからないケースが多いようです。そのため、定期検診での早期発見が重要。
緑内障の中でも日本人に多いのが正常眼圧緑内障だといわれる。正常眼圧緑内障とは、眼圧が高くないにもかかわらず緑内障になることをいう。この緑内障になる理由として2つほど考えられる。
①眼圧が、一日のうちで正常範囲より高くなる時間がある場合
②視神経が圧迫に弱いために、正常範囲の眼圧でも傷ついてしまう場合
緑内障を起こす眼圧が人によって異なるため、正常範囲と考えられていた眼圧が全ての人にとっての正常ではありません。
また、次に当てはまる人も緑内障には気をつけてほしいので、一度検査を受けることをおすすめします。 血縁者に緑内障の人がいる。
強度の近視
低血圧
頭痛持ち
冷え性
近視はその程度が高いほど、緑内障になるリスクが高いといわれる。また、低血圧・頭痛・冷え性の方は、血流が悪いと考えられ、この血流の悪さが、視神経にダメージを与える要因になりうると考えられる。

■緑内障の治療

緑内障を自覚した場合は、まずは眼科での受診をオススメします。眼科の医師と緑内障の治療方針について良く相談の上、治療をして下さい。緑内障の治療法について納得がいかなかった場合には、他の眼科の医師に尋ねてみるのも一つの方法です。
緑内障は、時間が経つほど治りにくくなるので、急性の緑内障の発作がおきた場合はすぐに治療を行い、眼圧を下げる必要があります。
緑内障の治療は、薬を使って眼圧を下げますが、十分に効果が出ない場合は、手術やレーザー治療を行います。
自分ひとりで緑内障について悩み、長く悩んでしまったために緑内障の症状が進行するよりも、まずは眼科の医師に相談することをオススメします。
※現在、緑内障の治療の研究にルテインが用いられているケースもあります。しかし、ルテインの効果・効能に関する記述は薬事法によって禁止されているため、「ルテインは緑内障に効果がある」ということは出来ません。眼の基礎的な栄養素として、利用してください。

■緑内障の予防

緑内障は、早期発見が大事ですので、眼科での定期的な検査(緑内障ドック)が一番の予防法といえます。緑内障は、眼圧測定だけではわからないため、眼底検査、視野検査などが必要となる。
また、緑内障は、ぶつかって眼圧が上昇する場合や生まれつき(隅角が未発達)でない場合には、生活習慣(糖分の摂りすぎ、血液がドロドロ、眼精疲労、ストレス、運動不足など)と何らかの関係があるのではないかと考えられています。
緑内障を治療・予防には、生活習慣の見直しや栄養補助食品などによるケアが重要です。

   


まぶたの痙攣(目の痙攣)

まぶたの痙攣とは、目の周りの筋肉の瞼(まぶた)がピクピク痙攣することです。
まぶたの痙攣には、一時的なまぶたの痙攣と長く続く瞼の痙攣があります。
一時的なまぶたの痙攣の多くは、疲れやストレスによるものが多く、あまり心配しすぎず、疲れのサインだと思って、まずはゆっくり休養をすることが大事です。
但し、まぶたの痙攣が一時的なものではなく、あまりにも長く続く場合には、目の病気の可能性も考えられますので、眼科にて一度検査していただくことをオススメします。

■まぶたの痙攣の症状

まぶたの痙攣の症状は、目の周りの筋肉の瞼(まぶた)が痙攣することです。
まぶたの痙攣の症状は、原因によって異なり、片側の瞼に生じるものや両側の瞼に生じるものがあります。

■まぶたの痙攣の原因

まぶたの痙攣にもさまざまな種類があり、症状によってまぶたの痙攣の原因が異なります。
一時的なまぶたの痙攣の場合は、読書、ネット、テレビ、ゲーム、勉強などで目を長時間酷使することやドライアイ、睡眠不足などが原因でまぶた(目)が痙攣していることが考えられます。
また、まぶたの痙攣の原因には、ストレスや目の病気によるまぶたの痙攣もあります。まぶたの痙攣が長く続き、一時的なまぶたの痙攣でない場合は、病院で一度診てもらいましょう。

■まぶたの痙攣の予防

まぶたの痙攣(目の痙攣)を予防するためには、充分な睡眠・休養をとり、バランスの良い食事をする。
バランスの良い食事が出来ない時にはカシスやブルーベリーなど健康補助食品やビタミンを利用する。
まぶたの痙攣が睡眠不足や眼精疲労が原因でない場合は、眼科専門医など病院で診てもらうことをおすすめします。

   


目の充血とは

目の充血には、結膜の炎症(結膜炎)による「結膜充血」と、ぶどう膜炎や急性緑内障などの眼球の中の病気による「強膜充血(毛様充血)」があります。
目の充血で痛みがある、目に不快感が続く場合は、すぐ眼科で診てもらいましょう。目の充血で痛みがない場合は、まずはゆっくり目を休めましょう。

■目の充血の種類

■結膜充血|目の充血

結膜充血は、鮮やかな赤色で、白目(眼球結膜)は周辺部が特に赤くなり、まぶたの裏(眼瞼結膜)も充血します。
結膜充血の場合は、目やにや涙を伴います。
結膜充血の場合はそのまましていても治る場合もあります。
■強膜充血(毛様充血)|目の充血
強膜充血は、紫がかった赤色で、白目は黒目(角膜)の周りが赤く、まぶたの裏まで充血しないのが特徴です。
強膜充血の場合は、涙は出ても目やには出ません。
強膜充血が見られたら、眼科で詳しい検査をして原因を調べる必要があります。
疲れ目が原因による充血が多いので、その場合は目薬などで無理に充血をとらずに目を休めることが効果的です。
毛様体・虹彩・脈絡膜とそれに隣接する組織を総称してブドウ膜といいますが、このブドウ膜が炎症を起こすブドウ膜炎による充血は、毛様充血の代表的な症例です。

■目の充血の原因

目を長時間酷使したことによる眼精疲労
ドライアイ
コンタクトレンズの間違った使用法
目の病気(結膜炎など)
上記の目の充血の原因は、あくまでも原因の例として挙げたにすぎません。症状の現れ方は、個人差があります。目の充血が長く続き、一時的な眼の充血でない場合は、病院で一度診てもらいましょう。

■目の充血の予防

定期的に目を休める。
遠くを見たり、目を動かして目の緊張を和らげる。
蒸しタオルで目のまわりを暖め血行をよくする。
目の周囲をマッサージする。
コンタクトレンズを正しく利用する。
普段から眼や身体の血流をよくするよう食事に気をつけ、健康補助食品などを利用する。

  目の充血は症状であり、病気そのものではありません。目の充血は自己防御反応の現れともいえます。
あまり充血の症状がひどい場合でなければ、まずはゆっくり睡眠をとるなど、目を休めることが一番です。
ドライアイ、結膜炎、眼精疲労など、目の充血を引き起こす要因は様々です。
しかし、身体の防御機構を働かせるために充血という症状が出ている場合もあります。
目薬で、簡単に充血を解消することができますが、身体の防御反応として眼の充血が起こっている場合、むやみに充血を取り除くことは逆効果かもしれません。
また、目の充血が起きたからといって、過度の目薬はくれぐれも習慣化しないように気をつけてください。

   


白内障

眼の中でレンズの役割を果たしている水晶体は、本来透明で光をよく通す。ところが、年齢とともに水晶体のたんぱく質が変性し、次第に白く濁ってくる。これを白内障という。
■白内障の症状

白内障の症状は、目の中の水晶体が白く濁ります。そのことにより、視力が低下します。他の白内障の症状としては、次のような症状があります。
眼がかすむ。
光をまぶしく感じる。
視力が低下する。急にめがねが合わなくなる。
このような症状があらわれたら、一度眼科で診てもらいましょう。

■白内障の原因

白内障の原因としては加齢によるものが多く、このことを「加齢性白内障(老人性白内障)」と呼んでいます。個人差はありますが、誰でも年をとるにつれて、水晶体は濁ってきます。加齢性白内障は一種の老化現象ですから、年齢が高い人ほど発症するケースが多いようです。
また、白内障は、加齢黄斑変性症と同様、紫外線やダイオキシンなどによる活性酸素が大きな原因の一つであると考えられている。
糖尿病網膜症になると、白内障になる人も多いといわれている。

■白内障の治療

白内障を自覚した場合は、まずは眼科での受診をオススメします。眼科の医師と白内障の治療方針について良く相談の上、治療をして下さい。
白内障の治療法について納得のいく説明が得られなかった場合には、他の眼科の医師にそのことを尋ねてみるのも一つの方法です。
白内障は老化現象ともいえますので、手術するほどでない場合には点眼薬や内服薬が用いて白内障の進行を遅らせるという方法をとります。この際に、眼の栄養補助食品としてルテインを利用する人もいます。
白内障の症状が進み、日常生活に支障がある場合は手術が行われます。
白内障の手術は著しく進歩し、かなり安全性が高く、患者さんの負担も少なくなってきています。優れた眼科医師の中では、驚くほどの短時間で手術を行なうことが出来る方もいます。
自分ひとりで白内障について悩み、長く悩んでしまったために白内障の症状が進行するよりも、まずは眼科の医師に相談することをオススメします。

■白内障の予防

白内障の予防には、眼の老化を遅らせるためにも抗酸化作用の強いポリフェノール(ブルーベリー・カシス)やルテイン、ビタミンC、ビタミンEなどを積極的に摂って、白内障を予防しましょう。
また、白内障は光(紫外線)などの影響が原因とも言われておりますので、目が健康な時期からの紫外線対策・白内障予防としてサングラスをかけることをオススメします。

   


眼精疲労

目が疲れるといったことは誰しも一度は経験があろうと思います。眼精疲労があると目だけの症状だけでなく、体全体に影響が現れます。

■眼精疲労の症状

眼精疲労の症状としては、次のような症状があります。
目の疲れが激しい。
眼が乾く。
視力が落ちる(視力低下)。
目が充血する。
眼の痛み。
肩こり・頭痛
目の痙攣。
眼のかすみ。
吐き気・食欲不振。
このような症状があらわれたら、一度しっかり目を休めて、ひどい場合は、眼科で診てもらいましょう。

■眼精疲労の原因

●目を長時間酷使する。

目を使う機会が増えているため、目を長時間酷使してしまい、眼精疲労の原因となります。
●目の病気

近視・乱視・老眼が進むと、よくものをみようとして目が疲れてきます。また、めがねやコンタクトレンズの矯正ができていないために、眼精疲労が起こるケースもあります。
この他にも、ドライアイ・緑内障・白内障などの目の病気があると、眼精疲労の原因になります。
また、精神的ストレスの影響が目に現れるため、眼精疲労が起こることもあります。

■眼精疲労の解消法・予防

【眼精疲労解消法①】 目をしっかり休める。
定期的に目を休める。
蒸しタオルで目を暖め血行をよくして、目の周りをマッサージする。
遠くを見たり、目を動かして目の緊張を和らげる。
普段から目や身体の血流をよくするよう食事に気をつけ、健康補助食品などを利用する。
紫外線などによる影響もあるため、サングラスをかける。

【眼精疲労解消法②】パソコン環境の改善・休憩をとる。

パソコン作業時間が長くなると、眼に大きな負担をかけてしまいます。目を酷使することで眼精疲労が起こりますので、1時間毎に1回休憩をとりましょう。遠くを見たりするだけでも眼は休まり、眼精疲労の解消に役立ちます。
同時に、肩や腕の緊張をほぐすと眼も休まりますので、全身の筋肉を動かしましょう。
また、机と椅子の高さ、姿勢、ディスプレイに対する目線の角度、ディスプレイまでの距離、部屋の明るさ、部屋の乾燥などにも注意。

【眼精疲労解消法③】メガネやコンタクトレンズの矯正

眼に合わないメガネやコンタクトレンズは、眼精疲労を起こし、しいては肩こり・頭痛につながります。また、メガネやコンタクトレンズを装用する必要があるのに、視力を矯正しないでいることはあまりよくありません。逆に、できるだけ遠くまで見えるように過度に矯正することもよくありません。定期的に眼科などで検診を受けましょう。

【眼精疲労解消法④】目の病気でないか定期的にチェックする



眼精疲労の原因に目の病気があるので、定期的に眼科で目の病気がないかチェックする。

  眼精疲労といっても、目を長時間酷使したことだけが原因ではなく、目の病気、加齢、体調、生活習慣による原因も考えられますので、目の疲れや眼精疲労の症状を感じた場合は、普段の生活習慣を考える良い機会だと考えてください。

   


飛蚊症|目の病気

飛蚊症(ひぶんしょう)とは、明るい所(白い壁、青空)などを見つめたとき、目の前に虫や糸くずなどの『浮遊物』が飛んでいるように見える症状のことをいう。
ほとんどの場合、問題ありませんが、重大な病気の初期症状として飛蚊症があらわれる場合もありますので、眼科専門医での検査をおすすめします。

■飛蚊症の症状

飛蚊症の症状は、目の前を虫や糸くずのような「浮遊物」が飛んでいるように見えます。

飛蚊症の症状の特徴としては、まばたきや視線を動かしても、この浮遊物は一緒に移動し、目をこすっても全く消えることはないということです。 特に明るい所でははっきり見えます。

■飛蚊症の原因

飛蚊症の原因としては、生理的なもの、老化現象によるもの、病気によるものなどいくつか挙げられます。

① 生理的飛蚊症

病気としてではなく飛蚊症を感じる方もいます。母胎の中にいる時に本来は消えるべき硝子体の中の組織がそのまま残って飛蚊症として感じるものです。しかし、この場合は程度も非常に軽く、病気ではありませんので、心配しすぎないようにしてください。

② 老化現象による飛蚊症

飛蚊症の原因として最も多いものが硝子体剥離です。この硝子体剥離の原因は、老化現象として起こります。硝子体とその奥の網膜は普通ぴったりとくっついています。ゼリー状の硝子体は老化や近視眼で収縮します。収縮すると硝子体と網膜とは離れてしまいます。これが硝子体剥離という状態です。この時もとの接着部分が硝子体混濁となり、その影が飛蚊症となるのです。

本来この接着部分は一つの輪ですが、やがてその輪がくずれて幾つにも分かれます。従って飛蚊症は通常、最初は一つの大きな黒い輪のようなものが見えますが、やがて小さな幾つもの黒点に数が増え、位置が変わって、徐々に少なくなります。いずれ気付かなくなることも稀ではありません。

③ 病気による飛蚊症

網膜剥離や網膜剥離の原因ともなる網膜の穴が開くこと、眼底出血などの病気による飛蚊症があります。できるだけ早く専門医の診察を受けることが大切です。

■飛蚊症の治療法

飛蚊症を自覚した場合は、まずは自分で判断するよりも眼科での受診をオススメします。眼科の医師と飛蚊症の治療方針について良く相談の上、治療をして下さい。
飛蚊症の治療法について納得がいかなかった場合には、他の眼科の医師に尋ねてみるのも一つの方法です。

※現在、飛蚊症治療の研究にルテインが用いられているケースもあります。しかし、ルテインの効果・効能に関する記述は薬事法によって禁止されているため、「ルテインは飛蚊症に効果がある」ということは出来ません。ルテインは眼の基礎的な栄養素として、利用してください。

   


ドライアイの症状

目の乾き
眼が痛い
目の充血
目の痙攣
10秒以上目が開けられない
理由もなく涙が出る
ドライアイの症状がひどくなると角膜や結膜に障害が起こってきます。
涙が足りないと、眼が乾いて傷つきやすい状態(=ドライアイ)となり、ドライアイの症状が重症になると眼の表面に無数の傷がついている場合もあります。

※涙が少なくなると、1.酸素や栄養分が角膜に十分に行き渡らない、2.眼に入った異物が洗い出せない、3.殺菌作用の低下などの悪影響が出ます。

■ドライアイの原因

ドライアイの原因1.目の酷使

VDT作業(パソコン・コンピュータでの作業)や読書、運転、携帯メールなどで、目を長時間酷使する。 涙の分泌量が減る。
まばたきの回数が減る。
ストレス
ドライアイの原因2.乾燥

部屋が乾燥していると、ドライアイになりやすくなります。乾燥した部屋では、涙が目の表面から気化してしまうため、ドライアイになりやすくなります。
ドライアイの原因3.コンタクトレンズ
ドライアイの人がコンタクトレンズを装用すると、悪影響が出やすくなり、また、ドライアイでない人でもコンタクトレンズを装用すると目が乾きやすくなります。
その他のドライアイの原因
加齢(年齢とともに涙の分泌量は低下する)
アレルギー性結膜炎。
目が大きい

■ドライアイの治療

ドライアイの症状が軽い場合にはやがておさまることもあります。しかしドライアイの症状がひどかったり、いつまでも長びくような場合には、眼の表面が傷ついていることが考えられるため、眼科の受診・治療をオススメします。
眼科の医師とドライアイの治療方針について良く相談の上、治療をして下さい。ドライアイの治療法について納得がいかなかった場合には、他の眼科の医師に尋ねてみるのも一つの方法です。

■ドライアイ対策・予防法

ドライアイ対策・予防1.目の休息
定期的に目を休める。
遠くを見たり、目を動かして目の緊張を和らげる。
蒸しタオルで目を暖め血行をよくする。
目の周囲をマッサージする。
まばたきの回数を意識的に多くする。
目や身体の血流をよくするよう食事に気をつけ、健康補助食品などを利用する。
ドライアイ対策・予防2.目薬を利用する。
ドライアイの症状がひどい場合には、ドライアイ専用目薬を利用する。(但し、過度の目薬はくれぐれも習慣化しないように気をつけてください。)
ドライアイ対策・予防3.部屋の湿度を保つ
部屋の湿度が下がると、ドライアイになるリスクが高くなるので、加湿器などを利用して、部屋の湿度を保つようにする。
ドライアイ対策・予防4.コンタクトレンズの正しい利用をする
コンタクトレンズを使用する際には、使用上の注意を守り、ドライアイの症状がひどい場合には、コンタクトレンズ専用目薬を利用してください。
睡眠不足など生活習慣の乱れにより、涙の分泌量が少なくなるため、ドライアイになることもあります。ドライアイにならないためにも、普段から目に優しい、つまり、あなた自身に優しい生活習慣をするようにしてください。

   


近視(仮性近視)

近くを見続けることで毛様体筋の緊張状態が続くことで起きる近視のことを仮性近視という。近くを見ていると、毛様体筋が緊張状態となり、筋肉が凝り固まってしまいます。このようなことが続くと、遠くを見てもピントがあわせられないため、近視(仮性近視)の状態となります。

■近視の症状

目の調節機能が低下し、視力が落ちる。
■近視の原因

テレビゲームや勉強などで、目を長時間酷使する。

■近視の予防

近視の予防法としては、まず定期的に目を休めることが重要。そして、目に優しい環境作りも大切です。
遠くを見たり、目を動かして目の緊張を和らげる。
蒸しタオルで目を暖め血行をよくする。
目の周囲をマッサージする。
普段から目や身体の血流をよくするよう食事に気をつけ、健康補助食品などを利用する。
特に目の調節機能のトレーニングを行う。

   


目のかゆみ

目に異物(花粉など)が入ってくると、結膜で、異物の刺激に対して物質が出されます。そして、その異物から目を守るために、血管に働きかけ、血管を拡張させて血流を増やしたり、目の粘膜の表面にある知覚神経を刺激して、目のかゆみを起こしたり、涙の量を増やしたりします。

つまり、目のかゆみや目の腫れ、充血などは、入ってしまった異物を体外に出そうとするために起きているのです。

■目のかゆみの原因

花粉症
ハウスダスト
大気汚染
花粉症、ハウスダスト、大気汚染など、目のかゆみを引き起こす原因は様々です。

■目のかゆみの対処法

目のかゆみは症状であり、病気そのものではありません。目のかゆみは自己防御反応の現れともいえます。
目を洗うことや目薬を利用するなど目のかゆみの対処法にもいろいろありますが、目のかゆみをきちんと対処するためにも、自己判断での目薬や飲み薬の使用はせず、まずは眼科で診てもらいましょう。

   


加齢黄斑変性

黄斑部は網膜の中心にあり、ここが物を見る中心となる。黄斑部は直径2mm、厚さ0.2mmにすぎないが、黄斑部が私たちの視力を支えている。

正常な黄斑部にはカロテノイド系色素ルテインとゼアキサンチンが集中的に分布している。加齢黄斑変性の患者の場合、黄斑部のルテインとゼアキサンチンが減少している。

加齢黄斑変性とは、この黄斑部が何らかの原因で変性し、黄斑部を再生しようと新生血管が発生。

この新生血管は構造がもろく、容易に出血してしまい、これにより網膜に障害が起こる。

■加齢黄斑変性の症状

加齢黄斑変性の初期の自覚症状としては、中心視力の衰え、物がゆがんで見える、飛蚊症などがある。

しかし、加齢黄斑変性になっても片目の場合、気づかないことが多く、両眼が罹患(りかん)して初めて気づくことが少なくない。

加齢黄斑変性の末期になると、視界の中心部にすっぽり穴があいたようになり、実質的に視力を失うことになる。

■加齢黄斑変性の原因

加齢黄斑変性は高齢者に多く発症することから黄斑部の老化現象が主な原因と考えられている。

また、加齢黄斑変性は、白色人種(欧米人)に多く発生しており、その主な理由としては、欧米人の眼が日本人の眼に比べ、光刺激(眼の老化を促進する原因)に弱いことが挙げられる。

しかし、現在では、日本人にも加齢黄斑変性の患者が増加している傾向にある。日本人の加齢黄斑変性の患者が増加している理由としては、生活習慣(特に食生活)の欧米化や、TVやパソコンによる光刺激を受ける機会が非常に多くなったことも原因のひとつと考えられる。

加齢黄斑変性の原因としてはこの他にも、紫外線などによる活性酸素や食生活・環境悪化による活性酸素の増加が原因とも考えられているが、加齢黄斑変性の原因は、完全には解明されておらず、現在もなお研究がなされている分野である。

※病気や喫煙、栄養状態(ビタミン、カロテン、亜鉛の不足)、遺伝なども加齢黄斑変性の原因と考えている方もいる。

■加齢黄斑変性の治療

加齢黄斑変性を自覚した場合は、まずは眼科での受診をオススメします。眼科の医師と加齢黄斑変性の治療方針について良く相談の上、治療をして下さい。
現在、加齢黄斑変性の決定的な治療法は確立されていません。レーザーを使って新生血管を破壊する方法がありますが、リスクがあるともいわれているので、加齢黄斑変性の治療法について納得がいかなかった場合には、他の眼科の医師に尋ねてみるのも一つの方法です。アメリカでは、ルテインを使った研究が多数ある。

■加齢黄斑変性の予防

加齢黄斑変性の予防法としては、自分で出来るチェックを定期的に行なうことです。日頃から、片眼をふさいでモノを見て、見え方に異常がないか確認しましょう。また、眼科への定期検診もおすすめします。
加齢黄斑変性を予防するためにも、生活習慣の改善が重要です。
紫外線などの光刺激を極力避ける。
亜鉛の血中濃度の低下と加齢黄斑変性の関連が研究されています。年をとるにつれて、亜鉛が含まれている食品(魚介類、穀類など)の摂取量が少なくなるとともに、腸の亜鉛を吸収する力が低下してしまうことから、亜鉛不足になりやすいといわれます。亜鉛が不足していると感じている方は、亜鉛を含む食品を摂るか亜鉛サプリを利用しましょう。
また、加齢黄斑変性はカロテノイドの摂取量が少ないと発症しやすいという研究報告もあります。カロテノイドを多く含んでいる緑黄色野菜を摂取するようにしましょう。全身の健康を維持するためにも、バランスのとれた食事を心がけましょう。

   


霰粒腫

■霰粒腫とは

眼瞼(まぶた)にあるマイボーム腺の出口がつまって慢性的な炎症が起きる結果、肉芽腫という塊ができる病気です。麦粒腫と異なり、細菌感染を伴わない無菌性の炎症です。

■霰粒腫の症状

症状は眼瞼の腫れや異物感です。典型例では痛みも赤みもなく、眼瞼にコロコロとしたできもの(腫瘤)を触れます。炎症を伴った場合は麦粒腫と似た症状が出ることがあり、これを急性霰粒腫と呼びます。

■霰粒腫の治療

腫瘤が小さければ自然に吸収されることもありますが、大きい場合は副腎皮質ステロイド薬を腫瘤に注射したり、手術で摘出したりする必要があります。急性霰粒腫に対しては、まず抗生物質などで消炎をはかります。高齢者では悪性腫瘍との鑑別が必要であることもあり、注意が必要です。

   


麦粒腫

■麦粒腫とは

俗に「ものもらい」と呼ばれている病気で、原因は細菌感染によるものです。汗を出す腺や、まつげの毛根に感染した場合を外麦粒腫、マイボーム腺の感染を内麦粒腫と呼びます。

■麦粒腫の症状

初めはまぶたに局所的な赤みが出現し、しばしば軽度の痛みや痒みを伴います。炎症が強くなってくると、赤み・腫れ・痛みが強くなります。化膿が進むと、腫れた部分が自然に破れて膿が出ることがあります。膿が出てしまえば、その後症状は回復に向かいます。

■麦粒腫の治療

抗生物質の点眼や内服を行います。化膿が進んだ場合は切開して膿を出すこともあります。汚い手で目をこすったりしないよう注意が必要です。

   


新生児涙嚢炎

■新生児涙嚢炎とは

涙は涙腺で作られて眼球表面を潤し、目頭にある涙点という小さな穴に吸い込まれます。吸い込まれた涙は細い管(鼻涙管)を通って鼻の奥へと流れます。この管の途中(主に鼻腔への出口の部分)に膜のようなものが残り、行き止まりになってしまった状態のまま生まれてくるお子さんがおり、これを先天性鼻涙管閉塞症と呼びます。この場合、涙は行き場を失ってしまうため、赤ちゃんはいつもたくさんの涙を目に浮かべているような状態となります。うまく涙が流れないため、この管のなかで細菌感染を起こすことがあり、これを新生児涙嚢炎と呼びます。こうなると、眼に涙が溜まる症状の他に、目やにが多く出るようになります。

■新生児涙嚢炎の診断

多くの場合、生まれて間もなくから目やにが多く、いつも涙を浮かべているようだといったような症状で眼科を受診されます。このような場合、まず涙管通水検査を行います。これは目頭にある涙点から生理食塩水を注入し、正常であれば鼻の奥に通過してゆくことが確認できますが、生理食塩水が涙点から逆流する場合は鼻涙管閉塞症であると診断することができます。さらに、逆流の中に膿が多い場合は、涙嚢炎まで合併していると判断できます。

■新生児涙嚢炎の治療

診断がついた場合、お子さんの月齢にもよりますが、まずは涙管通水検査を頻回に繰り返し、必要であれば抗生物質の点眼を併用した涙嚢マッサージをご家庭で行っていただきます。これによって鼻涙管が自然に開通することがあります。この場合の涙管通水検査は、検査の目的で行うのではなく、通水による水圧で自然開通を助ける目的があります。また、涙嚢炎を合併している場合は洗浄効果もあります。 以上の方法によっても自然開通が見込めない場合や、すでに初診時のお子さんの月齢が乳児期の半ばから後半であった場合、鼻涙管開放術(ブジー)を行います。これは、涙点から細い針金のようなもの(ブジー針)を鼻涙管に差し込んで、涙の流れを邪魔している膜を突き破るという方法です(図2)。この治療は、通常、外来で行われます。ごくまれですが、この鼻涙管開放術を行っても開通できないことがあり、この場合は手術を行うこともあります。

この病気は自然開通することが多いため、治療の方法もまちまちです。1歳になるまで鼻涙管開放術を行わないでよいとする報告や、いつでも涙が溜まった状態がお子さんのストレスになりかねないとする観点から、早めの鼻涙管開放術を勧める報告まであります。治療の方法や治療時期については、主治医とよく相談して決めることが重要です。

   


アレルギー性結膜炎

■はじめに

結膜とは上下のまぶたの裏側と、白目(強膜)の表面を覆っている半透明の膜で、皮膚に似た構造をしています。結膜には、細かい血管が豊富に存在し、またリンパ組織という免疫反応(体が異物に対して反応すること)を起こす組織もあるため、ここに異物が付着すると炎症反応が起こります。その結果、充血やかゆみ、流涙などの症状が出現します。

■アレルギー性結膜炎とは

アレルギーとは、外から入ってくる異物に対して、体が過剰に反応することで起こります。結膜は直接空気と接しているので、様々な異物が飛び込んできます。眼のアレルギーを起こす原因物質としては、「ハウスダスト」といわれるダニやカビ、動物の毛やフケ、花粉などが代表的です。

■アレルギー性結膜炎の種類と症状

(1) 花粉症

花粉が原因で生じるアレルギーです。花粉症を起こす植物としては、春先に多いスギ、秋に多いブタクサなどが有名ですが、花粉そのものが毒性を持っているわけではありません。花粉が体に入ってくると、「好酸球」という細胞が過剰に反応して、「ヒスタミン」などの化学伝達物質をたくさん作ってしまうことが花粉アレルギーの原因です。症状は眼のかゆみ・充血・異物感・目やになどです。花粉症では、毎年決まった季節に症状がみられることが特徴です。

(2) ハウスダストによるアレルギー性結膜炎(通年性アレルギー性結膜炎)

ハウスダストによる結膜炎も、原因や症状は花粉症と同様です。(異物が花粉ではなく、ハウスダストであるという違いだけです。)しかし、ハウスダストは花粉と異なり、常に身の回りにあるので、一年を通して症状が慢性的にみられるのが特徴です。

(3) 春季カタル

春季カタルはアレルギー性結膜炎の慢性重症型です。10歳くらいまでの男児に多く見られます。ハウスダストが原因となっていることが多いとされています。目のかゆみが非常に強いうえ、黒目(角膜)の表面に多くの小さな傷ができるために異物感が強く、光をまぶしく感じます。炎症が強いときは、黒目に白い濁りができることがあります。ひどくなると、白く濁った部分が剥がれ落ちて「角膜潰瘍」という状態になることもあります。
従来は、10歳を過ぎると症状は軽くなり、自然に治癒することが多かったのですが、アトピー性皮膚炎を合併することが多くなった最近では、20歳代でも強い症状がみられる人がいます。

■アレルギー性結膜炎の診断

目やにを顕微鏡で調べて「好酸球」という細胞が見つかれば確実にアレルギー性結膜炎と診断できます。ただし、通常は、充血やかゆみなどの症状や結膜の状態から容易に診断することができます。
アレルギーを起こしている原因物質を調べる方法には、皮膚をこすって疑わしい物質のエキスを乗せ、その部分が赤くなるかどうかを見る「スクラッチテスト」や、血液検査などがあります。

■アレルギー性結膜炎の治療

抗アレルギー作用をもつ目薬を用いた治療が主に行われます。花粉症の場合、あらかじめ季節が判明しているときは、かゆみなどの自覚症状が出現する前に目薬をつけ始めることで、症状の出現を予防したり、軽くしたりすることができます。かゆみなどの症状が強いときは、ステロイドを含む目薬が使われることもあります。この目薬は、症状を抑える効果は強いのですが副作用として眼圧上昇を起こすことがあるので、眼科に通院しながら注意深く使う必要があります。目薬だけで症状が治まらないときには、抗アレルギー薬を内服することもあります。春季カタルなどの重症例では、少量のステロイド薬を内服したり、結膜へのステロイド薬の注射などを併用したりすることもあります。
以上の治療法は、症状を抑える「対症療法」といわれる方法です。これに対し、アレルギーのそのものを改善する方法として、「減感作療法」という治療法があります。これは、アレルギーの原因が検査で明らかである場合に、その原因物質を低い濃度から徐々に高い濃度へ半年ぐらいかけて注射することにより、その物質にアレルギー反応を起こさないようにする方法です。

■アレルギー性結膜炎の予防方法

花粉症の場合は、症状の出現しやすい季節にできるだけ花粉と接しないように工夫することが重要です。
ゴーグル型の眼鏡や花粉防止用のマスクの着用が最も効果的です。花粉が飛びやすい日は外出や洗濯物などを外に干すことを避けたり、外出から帰宅したときには服についた花粉を十分に落とすようにしましょう。目を洗うことは目を傷つけてしまうこともあるため、あまり勧められません。洗顔して目の周りを洗うことはよいでしょう。ハウスダストの場合は、部屋の清潔を心掛けたり、寝具を干したりするのも効果的です。また動物を屋内で飼うことは避けたほうがよいでしょう。

   


ウイルス性結膜炎

■はじめに

結膜とは、上下のまぶたの裏側と白目(強膜)の表面を覆っている半透明の膜です。血管が豊富で、また免疫反応を司るリンパ組織もあります。結膜は直接外界と接しているので、いろいろな病原物質にさらされやすい環境にあります。

■ウイルス性結膜炎とは

ウイルスが感染することによって起こる結膜炎です。結膜が充血し、目やに(眼脂)が出たり、目の痛みや異物感などを主な症状とする病気です。原因ウイルスには、アデノウイルス・エンテロウイルス・コクサッキーウイルス・ヘルペスウイルスなどがありますが、ヘルペスウイルス以外のウイルスが原因で発症した結膜炎は、他の人に感染させる力が強く、時に家庭内感染や学校内の集団感染などの原因になります。

■ウイルス性結膜炎の種類と症状

(1) 流行性角結膜炎

アデノウイルス(8型、19型、37型)によって起こる結膜炎です。感染力が強く、昔から俗に「はやり目」と呼ばれています。症状としては、白目が充血し目やにが出て、眼痛を伴うことがあります。かゆみはほとんどありません。耳の前や顎の下にあるリンパ節が腫れることもあります。症状の強い人では、瞼の裏に白い炎症性の膜ができることがあり(偽膜)、特に小さなお子さんでは成人より偽膜が生じやすいといわれています。偽膜ができると目の表面が荒れてしまうことがあります。この病気の潜伏期は約1週間です。最初は片目だけに発症しても、数日中にもう片目に症状が出現することがあります。通常、発症してから約1週間を経過した頃が病状のピークで、その後、徐々に改善してきますが、炎症が強い場合は黒目(角膜)の表面に小さな濁りができてしまうことがあります。この場合、ステロイド薬の目薬を使うことがあります。角膜の濁りも、時間とともに徐々に消えてゆきますが、完全に消えるまでに数ヶ月かかることもあります。

(2) 咽頭結膜熱

アデノウイルス(3型、4型、7型)によって起こる結膜炎で、俗に「プール熱」と呼ばれています。この結膜炎は、白目の充血や目やにといった眼の症状のほかに、のどの痛みや39度前後の発熱がみられるのが特徴です。潜伏期は約1週間で、症状は発症から1週間くらいで軽快してきます。

(3) 急性出血性結膜炎

エンテロウイルス(70型)やコクサッキーウイルス(A24変異型)によって起こる結膜炎です。症状は急性で、眼痛や目やにが出現し、しばしば白目に出血がみられます。症状の強いときは角膜に小さな傷ができることがありますが濁りになることはありません。潜伏期は1日で、症状は発症から1週間くらいで軽快します。

(4) ヘルペス性結膜炎

ヘルペスウイルスによる結膜炎は、他の人にはあまりうつりません。症状としては、白目の充血や眼脂などに加え、多くは目の周りの皮膚に小さな薄い赤色の水疱がみられます。このウイルスは特徴的な角膜炎(角膜ヘルペス)を合併することもあり、この場合はしっかりと治療する必要があります。

■ウイルス性結膜炎の治療

ヘルペス性結膜炎以外のウイルス性結膜炎に対しては、今のところ残念ながら特効薬はありません。感染したウイルスに対する抗体が体内で作られるのを待つしかありません。通常、炎症を抑え、細菌による二次感染を防止するための目薬を使用します。 ヘルペスウイルスには抗ヘルペスウイルス作用を持つ眼軟膏を用います。また症状によっては抗ウイルス薬の内服や点滴治療を併用することもあります。

■ウイルス性結膜炎の感染予防

ウイルスによる結膜炎と診断されたら、周囲の人にうつさないように注意しなければなりません。他人へ感染させる恐れのある期間は、流行性角結膜炎や咽頭結膜熱では約1~2週間、急性出血性結膜炎では3〜4日です。学校保健法では、流行性角結膜炎と急性出血性結膜炎は医師が周囲への感染力がなくなったと判断するまで、咽頭結膜熱は主要症状が消退した後2日を経過するまで登校を禁止すること、と明記されています。社会人でも集団感染を防止する意味で、できるだけ仕事を休むのが望ましいといえます。特に、学校・医療施設・接客業に従事している人は、職場の内規で休業を義務付けているところもあります。 ウイルスは目をこすった手や目を拭いたハンカチなどから感染することがほとんどです。感染を予防するにはよく手を洗うことが重要です。また目を拭くときはテッシュペーパーなどの使い捨てのものを使い、タオルなどは家族と別のものを使ってください。お風呂は最後に入るようにしましょう。

   


翼状片

■翼状片とは

翼状片とは、白目の表面を覆っている半透明の膜である結膜が、目頭(めがしら)の方から黒目に三角形状に入り込んでくる病気です。自覚症状としては充血や異物感などがあります。鏡で自分の目をみれば一目瞭然なので、「白目の一部が黒目に伸びてきた」というような症状で受診される人がほとんどです。しばしば両目に起こります。原因は不明ですが、高齢者に多く病気の発生には紫外線が関係しているといわれています。

■翼状片の治療

翼状片自体は悪性の組織ではなく、症状がなければ放置しても問題はないのですが、充血や異物感が強くなってくれば点眼などの治療を行います。根本治療には手術が必要です。また、翼状片が瞳の近くまで伸びてくると乱視が発生して見えにくくなるため、この場合も手術が必要となります。ただし、手術を行っても再発することが多く、この傾向は年が若いほど顕著です。

■偽翼状片

目の外傷・熱傷・化学眼外傷・角膜潰瘍などの回復過程で、翼状片に似た病状が出現することがあります。これを偽翼状片と呼びます。治療は翼状片に準じて行われます。

   


角膜感染症

■はじめに

角膜は厚さ約0.5mmの透明な組織で、俗に「黒目」と呼ばれています。その角膜に病原性を持った微生物が付着し繁殖した状態を角膜感染症と呼びます。通常、角膜の表面は角膜上皮という組織で覆われており、簡単には微生物が進入できないような構造になっています。しかし、何らかの原因で角膜上皮に傷ができてしまうと微生物が付着し繁殖しやすくなります。角膜感染症を起こす主な微生物として、細菌・真菌(病原性を有するカビ)・アカントアメーバ・ヘルペスウイルスなどがあります。

■細菌性角膜炎

細菌が原因で起こる角膜感染症です。強い眼の痛みと大量の目やにを自覚します。角膜の一部が白く濁り、白目が強く充血します。治療は抗生物質を頻回に点眼し、重症な場合は抗生物質の内服や点滴も併用します。細菌の種類によっては病状の進行が非常に早いものもあり、放置した場合、角膜が融けて穿孔(孔が開くこと)することさえあります。治療によって細菌が除去できたとしても、角膜に濁りを残して視力が低下したままになってしまうこともあります。

■真菌性角膜炎

真菌とは病原性カビの一種であり、これによる角膜感染症を真菌性角膜炎と呼びます。健康な角膜には真菌が進入するということはほとんどありえず、この病気自体まれなものです。しかし、ステロイド薬の目薬を長期にわたって点眼している人やコンタクトレンズの不適切な使用を続けている人では真菌性角膜炎を発症しやすく、また植物の枝で目を突いてしまったことなどが原因で起こることもあります。症状は、細菌性角膜炎と極めて類似していますが、抗生物質が全く効きません。細菌性角膜炎と診断され抗生物質による治療を続けているにもかかわらず改善しないために大きな病院へ紹介されることもしばしばです。診断を確実にするには、真菌の培養検査のほか、病巣の一部を顕微鏡で調べて真菌の存在を明らかにする必要があります。治療は、抗真菌薬の点眼や内服、場合によっては点滴を行います。

■アカントアメーバ角膜炎

アカントアメーバと呼ばれる微生物が原因で起こる角膜感染症で、やはり症状は細菌性や真菌性角膜炎と似ています。アカントアメーバ角膜炎を発症した人の半数はソフトコンタクトレンズ使用者であり、取り扱いが不適切である場合がほとんどです。治療には抗真菌薬が用いられますが、極めて治りにくいのが特徴です。

■ヘルペス性角膜炎

ヘルペスウイルスと呼ばれるウイルスが原因で起こる角膜感染症です。ヘルペスウイルスには単純ヘルペスと帯状ヘルペスとがありますが、どちらのウイルスも角膜炎を起こします。角膜の炎症がそれほど強くないにもかかわらず、強い眼の痛みを自覚することが特徴的です。治療は、抗ウイルス薬の眼軟膏を使用したり、重症例には内服や点滴を行うこともあります。また、いったん完治しても体調が不良になったときなどに再発することがあります。再発を繰り返すと、角膜に濁りを生じて視力障害を残したり、角膜が薄くなって穿孔したりすることもあります。

■おわりに

角膜感染症は、重症例では失明することもあり、眼病の中でも比較的緊急性の高い病気です。強い充血や眼の痛み、大量の目やになどの症状が出現し、角膜感染症が疑わしい場合には早めに眼科を受診することが大切です。

   


角膜内皮障害

■はじめに

角膜は、俗に「黒目」とよばれる部分に相当し、光学レンズの役目をもつ透明な組織です(図1)。組織学的には5層から成りますが、その一番内側に位置しているのが角膜内皮と呼ばれる組織です。角膜内皮は、六角形をした角膜内皮細胞が敷石状に規則的に配列された構造をしています(図2)。ヒトの角膜内皮細胞は一度障害されると再生せず、障害された部分は周りの内皮細胞が面積を拡大して補います。角膜内皮細胞は角膜の透明度を維持するためになくてはならない存在であり、内皮細胞の密度がある限度を超えて少なくなると角膜にむくみが発生し角膜の透明性が維持できなくなります。このような状態を水疱性角膜症と呼びます。

■角膜内皮が障害される原因

角膜内皮が障害される主な原因として、以下のようなものが考えられます。
(1) 眼内の操作を要する手術(内眼手術)や、レーザー治療
(2) 急激な眼圧の上昇(特に緑内障発作)
(3) 眼の外傷
(4) 眼内の炎症(ぶどう膜炎など)
(5) 先天性のもの
(6) コンタクトレンズによる酸素不足

■角膜内皮障害の症状

角膜全体にむくみが出現しないうちは、特に症状はありません。角膜にむくみが出現するとかすみを自覚するようになります。このような状態まで進行すると角膜表面を構成する細胞(角膜上皮細胞)が剥げ易くなり、そうなると非常に強い眼の痛みを自覚するようになります。

■角膜内皮障害の治療

症状がなければ、特に治療の必要はありません。角膜のむくみが軽い場合は点眼薬でむくみを緩和できることがあります。さらに進行して眼の痛みが出現するようであれば、痛みの緩和のために治療用ソフトクンタクトレンズの装用も効果があります。しかし、ここまで病状が進行した場合、多くは全層角膜移植術が必要となります。減少した角膜内皮細胞を再生させるような治療法は、残念ながら今のところありません。

   


ぶどう膜炎

■はじめに

虹彩・毛様体・脈絡膜の総称をぶどう膜と呼びます。ぶどう膜炎とは、このぶどう膜の一部あるいは全てが炎症を起こす病気です。

■ぶどう膜炎の症状

一般に、羞明感(まぶしく感じること)・眼痛・霧視(かすみがかかったように見えること)・充血・視力低下・飛蚊症(虫が飛んでいるように見えること)などの症状が出現します。

■ぶどう膜炎の原因、種類

ぶどう膜に対する過剰な免疫反応や、細菌・ウイルス・カビ(真菌)などによる感染が原因となることがありますが、原因を特定できないこともしばしばです。
詳細は省きますが、昔から有名なぶどう膜炎として、ベーチェット病・サルコイドーシス・原田病が挙げられ(三大ぶどう膜炎)、いずれも、免疫系の異常が原因で発症することが分かっています。これらの病気では、目ばかりでなく、それぞれの病気に特徴的な全身症状や検査所見が認められます。

■ぶどう膜炎の検査

一般的な眼科の検査に加えて、必要に応じて眼底の血管造影検査(蛍光眼底造影検査)を行います。また、場合によっては、血液検査・胸部X線検査などの全身検査を行って、原因の究明や治療効果の判定を行います。

■ぶどう膜炎の治療

ぶどう膜炎の治療の中心はステロイド薬の点眼や内服、あるいは点滴です。原因が細菌などの病原微生物による場合は、その病原微生物に効果のある薬が使用されます。茶目(虹彩)は水晶体と癒着しやすいので、これを防止するための治療も同時に行われます。三大ぶどう膜炎と呼ばれるベーチェット病・サルコイドーシス・原田病では、基本的な治療法がやや異なります。ぶどう膜炎の原因や重症度によって、治療法や治療の程度は異なります。

■おわりに

ぶどう膜炎は再発をすることの多い病気で、特に過労やストレスが再発の誘引になることがあります。日頃から規則正しい生活を心掛け、心身ともに十分な休養を取ることが大切です。万一、ぶどう膜炎と診断された時は、症状の経過や治療内容をよく書き留めておき、転居などで通院する医療機関が変わった場合でも、スムースに治療を引き継げるようにしておくことが望ましいといえます。

   


白内障

■白内障とは

人の目の中で、カメラのレンズにあたる部分を水晶体(図1)と呼びますが、この水晶体が濁ってくる病気を白内障といいます。昔から俗に「しろそこひ」と呼ばれている病気です。進行すると手術が必要になりますが、手術技術の進歩により現在では良好な視力が回復できるようになりました。平均寿命も延長し、高齢者が現役として活躍することの多い現代社会で、白内障手術の進歩は大きな福音です。 原因として最も多いのが加齢によるもので、一般に老人性白内障と呼ばれています。早い人では40歳代から始まり、80歳代では詳しく検査を行えば大部分の人で白内障が発見されます。その他の原因として、外傷によるもの・先天的なもの・薬剤による副作用・そして他の目の病気に続いて起こるものなどが挙げられます。 水晶体が濁り始めると、かすんだり、物が二重に見えたり、まぶしく見えるなどの症状が出現します。進行すれば視力が低下してきます。

■白内障手術について

白内障のごく初期は点眼薬で進行を遅らせることができる場合もありますが、治癒させることはできません。進行した白内障に対しては、濁った水晶体を手術で取り除き、眼内レンズを埋め込む方法が一般的に行われます。
手術は局所麻酔で行われ、痛みはほとんどありません。最近の手術は約3mmの創(きず)から超音波の力で水晶体を吸い出し(超音波水晶体摘出術)、残した薄い膜(水晶体嚢)の中に眼内レンズ埋め込むという方法が主に行われています。

■眼内レンズについて

最近の眼内レンズには様々なタイプのものがあります。具体的には、紫外線を吸収するタイプのもの・メガネでいえばサングラスのように少し色がついたもの・手術の創を小さくする目的で折り畳むことが可能な柔らかい材質のもの・遠方も近方も見えるような仕組みになっている多焦点型のものなどがあり、患者さんの年齢や目の状態などに応じて使い分けられています。

■手術後の見え方と注意点

白内障手術を受けた後の患者さんは、青みがかかって見えるという感覚を自覚される場合があります。この現象は手術後1、2週以内によく起こりますが、特に害はなく多くは経過とともに感じなくなります。また、眼底や視神経に別の病気が隠れていると、手術がうまくいっても視力が思うように出ないことがあります。
術後一定期間は医師が処方した点眼薬をつけなければなりません。手術を受けてからしばらくは目をこすらないよう注意する必要があります。通常の日常生活はすぐ再開できますが、処方された点眼薬や内服薬を怠らないことはとても大切です。

■手術後の合併症について

最近の白内障手術は大多数の患者さんにとって視力を回復することができる安全な手術となりましたが、手術後に次のような合併症を起こすことがあります。
最も多いのは、眼内レンズを支えている袋(水晶体嚢)の後ろ(後嚢)が手術後1~2年で濁ってくる後発白内障といわれるものです。しかし最近では、特殊なレーザーを用いることにより外来で簡単に治療できます。また非常に稀ですが、網膜剥離や術後感染性眼内炎など、重篤な合併症が起こることもあります。特に、術後感染性眼内炎は、場合によっては失明に至ることもあります。

■おわりに

高齢化社会が進む現在、白内障は目の病気の中で最もありふれたもののひとつとなりました。白内障手術は年々進歩しており、安全な手術となったばかりでなく、以前にも増して早期の視力回復・社会復帰が可能となりました。目のかすみや視力が落ちたと感じる方は、気軽にお近くの眼科を受診してみてください。

   


ぶどう膜炎

■はじめに

虹彩・毛様体・脈絡膜の総称をぶどう膜と呼びます。ぶどう膜炎とは、このぶどう膜の一部あるいは全てが炎症を起こす病気です。

■ぶどう膜炎の症状

一般に、羞明感(まぶしく感じること)・眼痛・霧視(かすみがかかったように見えること)・充血・視力低下・飛蚊症(虫が飛んでいるように見えること)などの症状が出現します。

■ぶどう膜炎の原因、種類

ぶどう膜に対する過剰な免疫反応や、細菌・ウイルス・カビ(真菌)などによる感染が原因となることがありますが、原因を特定できないこともしばしばです。
詳細は省きますが、昔から有名なぶどう膜炎として、ベーチェット病・サルコイドーシス・原田病が挙げられ(三大ぶどう膜炎)、いずれも、免疫系の異常が原因で発症することが分かっています。これらの病気では、目ばかりでなく、それぞれの病気に特徴的な全身症状や検査所見が認められます。

■ぶどう膜炎の検査

一般的な眼科の検査に加えて、必要に応じて眼底の血管造影検査(蛍光眼底造影検査)を行います。また、場合によっては、血液検査・胸部X線検査などの全身検査を行って、原因の究明や治療効果の判定を行います。

■ぶどう膜炎の治療

ぶどう膜炎の治療の中心はステロイド薬の点眼や内服、あるいは点滴です。原因が細菌などの病原微生物による場合は、その病原微生物に効果のある薬が使用されます。茶目(虹彩)は水晶体と癒着しやすいので、これを防止するための治療も同時に行われます。三大ぶどう膜炎と呼ばれるベーチェット病・サルコイドーシス・原田病では、基本的な治療法がやや異なります。ぶどう膜炎の原因や重症度によって、治療法や治療の程度は異なります。

■おわりに

ぶどう膜炎は再発をすることの多い病気で、特に過労やストレスが再発の誘引になることがあります。日頃から規則正しい生活を心掛け、心身ともに十分な休養を取ることが大切です。万一、ぶどう膜炎と診断された時は、症状の経過や治療内容をよく書き留めておき、転居などで通院する医療機関が変わった場合でも、スムースに治療を引き継げるようにしておくことが望ましいといえます。

   


糖尿病網膜症

■はじめに

糖尿病網膜症は、糖尿病腎症・神経症とともに糖尿病の3大合併症のひとつで、我が国では成人の失明原因の第一位となっています。
網膜は眼底にある薄い神経の膜で、ものを見るために重要な役割をしています。網膜には光や色を感じる神経細胞が敷きつめられ、無数の細かい血管が張り巡らされています。血糖が高い状態が長く続くと、網膜の細い血管は少しずつ損傷を受け、変形したりつまったりします。血管がつまると網膜のすみずみまで酸素が行き渡らなくなり、網膜が酸欠状態に陥り、その結果として新しい血管(新生血管)を生やして酸素不足を補おうとします。新生血管はもろいために容易に出血を起こします。また、出血すると網膜にかさぶたのような膜(増殖組織)が張ってきて、これが原因で網膜剥離を起こすことがあります。糖尿病網膜症は、糖尿病になってから数年から10年以上経過して発症するといわれていますが、かなり進行するまで自覚症状がない場合もあり、まだ見えるから大丈夫という自己判断は危険です。糖尿病の人は目の症状がなくても定期的に眼科を受診し、眼底検査を受けるようにしましょう。

■糖尿病網膜症の分類

糖尿病網膜症は、進行の程度により大きく三段階に分類されます。

(1) 単純糖尿病網膜症

初期の糖尿病網膜症です。最初に出現する異常は、細い血管の壁が盛り上がってできる血管瘤(毛細血管瘤)や、小さな出血(点状・斑状出血)です。蛋白質や脂肪が血管から漏れ出て網膜にシミ(硬性白斑)を形成することもあります。これらは血糖値のコントロールが良くなれば改善することもあります。この時期には自覚症状はほとんどありません。詳しい網膜の状態を調べるため眼底の血管造影(蛍光眼底造影検査)を行うこともあります。

(2) 前増殖糖尿病網膜症

単純網膜症より、一歩進行した状態です。細い網膜血管が広い範囲で閉塞すると、網膜に十分な酸素が行き渡らなくなり、足りなくなった酸素を供給するために新しい血管(新生血管)を作り出す準備を始めます。この時期になるとかすみなどの症状を自覚することが多いのですが、全く自覚症状がないこともあります。前増殖糖尿病網膜症では、多くの場合、網膜光凝固術を行う必要があります。

(3) 増殖糖尿病網膜症

進行した糖尿病網膜症で重症な段階です。新生血管が網膜や硝子体に向かって伸びてきます。新生血管の壁が破れると、硝子体に出血することがあります(図2)。硝子体は眼球の中の大部分を占める透明な組織です。ここに出血が起こると、視野に黒い影やゴミの様なものが見える飛蚊症と呼ばれる症状を自覚したり、出血量が多いと急な視力低下を自覚したりします。また、増殖組織といわれる線維性の膜が出現し、これが網膜を引っ張って網膜剥離(牽引性網膜剥離)を起こすことがあります(図3)。この段階の治療には、手術を必要とすることが多くなりますが、手術がうまくいっても日常生活に必要な視力の回復が得られないこともあります。この時期になると血糖の状態にかかわらず、網膜症は進行してゆきます。特に年齢が若いほど進行は早く、注意が必要です。

※糖尿病黄斑症

黄斑は網膜の中心にあり、ものを見るために最も重要な部分です。黄斑付近に毛細血管瘤などが多発したり血液成分が染み出たりするなどの理由により、黄斑にむくみを生じた状態が糖尿病黄斑症です。単純網膜症の段階でも起こることがあり視力が低下してしまいます。

■糖尿病網膜症の治療

(1) 網膜光凝固術

網膜光凝固術にはレーザーが用いられ、通常は通院で行います。網膜光凝固術は主に網膜の酸素不足を解消し、新生血管の発生を予防したり、すでに出現してしまった新生血管を減らしたりすることを目的として行います。光凝固は正常な網膜の一部を犠牲にしますが、全ての網膜が共倒れになるのを防ぐためにはやむを得ません。この治療で誤解を生みやすいのは、今以上の網膜症の悪化を防ぐための治療であって、決して元の状態に戻すための治療ではないということです。まれに網膜全体のむくみが軽くなるといったような理由で視力が上がることもありますが、多くの場合、治療後の視力は不変かむしろ低下します。網膜症の進行具合によって、レーザーの照射数や照射範囲が異なります。網膜光凝固術は早い時期であればかなり有効で、将来の失明予防のために大切な治療です。

(2) 硝子体手術

レーザー治療で網膜症の進行を予防できなかった場合や、すでに網膜症が進行して網膜剥離や硝子体出血が起こった場合に対して行われる治療です。眼球に3つの穴をあけて細い手術器具を挿入し、目の中の出血や増殖組織を取り除いたり、剥離した網膜を元に戻したりするものです。顕微鏡下での細かい操作を要し、眼科領域では高度なレベルの手術となります。

   


網膜剥離

■はじめに

網膜剥離は治療せずに放置した場合、失明する可能性の高い病気です。どの年齢でも網膜剥離になる可能性がありますが、20歳代と50歳代の人に多いといわれています。
網膜剥離の治療の中心は手術療法です。手術により、最終的には約95%の確率で網膜を元の位置に戻してやること(網膜復位)が可能です。

■網膜の構造

 網膜は物を見るための神経の膜です。光があたるとそれを電気信号に変えて、視神経を介して脳に刺激を伝えます。網膜は10層の組織から構成されていて、最も深い部分を網膜色素上皮と呼びます。物を見る中心部分を黄斑(おうはん)と呼び、ここは光に対して非常に敏感な部分です。

■網膜剥離とは

網膜剥離とは、何らかの原因で網膜が網膜色素上皮から剥がれてしまう状態のことです。網膜に孔(あな)が開くことによって起こるものや、滲出液という水分が網膜の下に溜まって起こるものなど原因は様々です。最も多いのは、網膜に孔(網膜裂孔)が開いてしまい、眼の中にある水(液化硝子体)がその孔を通って網膜の下に入り込むことで発生する網膜剥離(裂孔原性網膜剥)です。一般に、初めのうちは剥離した網膜の範囲は小さくても、時間とともにだんだんこの範囲が拡大するというような経過をたどります。重症の場合は全ての網膜が剥がれてしまいます。網膜に孔が開く原因として、老化・網膜の萎縮・外傷などがあります。剥がれた網膜は光の刺激を脳に伝えることができません。また、剥がれた網膜には栄養が十分ゆきわたらなくなるため、網膜剥離の状態が長く続くと徐々に網膜の機能が低下してしまいます。そうなると、たとえ手術によって網膜が元の位置に戻せたとしても、見え方の回復が悪いといった後遺症を残すことがあります。

■網膜剥離の症状

網膜剥離の前駆症状として飛蚊症(小さなゴミのようなものが見える症状)や光視症(視界の中に閃光のようなものが見える症状)を自覚することがありますが、無症状のこともあります。病状が進んでくると視野欠損(カーテンをかぶせられたように見えにくくなる症状)や視力低下が起きます。網膜には痛覚がないので、痛みはありません。

■網膜剥離の治療

網膜裂孔だけであれば、レーザー治療で網膜剥離への進行が抑えられることもあります。すでに網膜剥離が発生してしまった場合、多くは手術が必要となります。手術は大きく分けて2つの方法があります。 ひとつは眼の外から網膜裂孔に相当する部分にあて物をあてて、さらに孔の周りに熱凝固や冷凍凝固を行って剥離した網膜を剥がれにくくし、必要があれば網膜の下に溜まった水を抜くというやり方です。剥がれた網膜を目の中から押さえつけるために、眼内に空気や特殊なガスを注入することがあり、この場合は手術後にうつぶせ安静が必要です。
もうひとつの方法は、眼の中に細い手術器具を入れ、眼の中から網膜剥離を治療する硝子体手術という方法です。この方法では、剥がれた網膜を押さえるために、ほぼ全例で眼の中に空気や特殊なガスを入れます。

■網膜剥離の予後

手術療法によって多くの網膜剥離は復位させることができますが、一度の手術で網膜が復位しないために、複数回の手術を必要とすることもあります。また、最大限に手を尽くしても、残念ながら失明してしまう場合もあります。
網膜剥離の重症度にもよりますが、手術療法では数週間の入院を要することが一般的です。日常生活や運動などが始められるようになるまでの時期に関しては、個々のケースで異なるため、医師とよく相談する必要があります。
術後の視力に関しては、もともと黄斑が剥がれていない場合には手術前と同程度にまで回復する場合もありますが、黄斑が剥がれてしまっていた場合には、元通りの視力に戻ることは難しくなってしまいます。網膜剥離が発生から間もない状態であり、剥がれている範囲も小さい場合は、手術も比較的簡単で見え方も元通りに回復する可能性が高いといえます。飛蚊症や光視症のような症状を自覚した場合には、早めに眼科医の診察を受けることが大切です。

   


網膜静脈閉塞症

■網膜の血管

眼球の中には、神経の膜で構成される網膜という光を感じるための組織があります。網膜には動脈と静脈が網目のように走っており、網膜に栄養を供給する役割を果たしています。

■網膜静脈閉塞症とは

網膜静脈の血液の流れが、何らかの原因で途絶えてしまう病気を網膜静脈閉塞症と呼びます。硬くなった動脈によって静脈が圧迫を受けたり、血栓などがつまることが原因と考えられています。

■網膜静脈閉塞症の症状

突然の目のかすみ・視力低下が主な症状ですが、血管の閉塞した場所などによって視力低下の程度は様々で、全く自覚症状がないこともあります。眼底出血を起こすことがほとんどで、これが網膜の中心の黄斑に影響を及ぼすと極端に視力が低下します。

■網膜静脈閉塞症の検査

この病気は眼底検査を行うことで容易に診断することができます。網膜血管内の血液の流れの状態を正確に把握するため、場合によっては造影剤を用いた蛍光眼底造影検査を行うことがあります。

■網膜静脈閉塞症の治療

一般に、止血薬・血流改善薬・抗凝固薬・抗血小板薬などの内服治療が行われます。重症例の急性期には点滴による治療を行うこともあります。また、長期間にわたり静脈が閉塞したままの状態で放置された場合、眼内の血液不足を補おうとする反応として、目の中で新たな血管(新生血管)が生えてくることがあります。新生血管は難治性の緑内障を引き起こしたり、破裂して硝子体出血を来たしたりすることがあるため、新生血管の発生を予防する目的で早期にレーザーによる網膜光凝固を行うことがあります。

糖尿病や高血圧などのいわゆる成人病がこの病気の誘引であることが多く、これらに対する治療は非常に重要です。また、タバコはこの病気の危険因子といわれているので、禁煙することも効果的です。

   


中心性漿液性脈絡網膜症

■はじめに

中心性漿液性脈絡網膜症は、光を感じる神経の膜である網膜の中で、最も視力に関係する部分(黄斑)に発生する病気で、30〜50歳の働き盛りの男性に多くみられます。ほとんどは良好な経過をたどり自然軽快傾向が強い病気です。

■中心性漿液性脈絡網膜症の症状

視力低下は軽い場合がほとんどです。視野の中心が暗く見える中心暗点、ものが実際よりも小さく見える小視症、ものゆがんで見える変視症などの症状も伴います。

■中心性漿液性脈絡網膜症の原因

黄斑付近の網膜に栄養分を供給する血管から血液中の水分がにじみ出て、この水分が黄斑付近に溜まることで発症します。原因は未だに不明ですが、ストレスが誘引になるといわれています。

■中心性漿液性脈絡網膜症の検査・治療

この病気の診断は眼底検査で比較的容易にできますが、血管からの染み出しの部分を見つけるために造影剤を用いた蛍光眼底造影検査を行います。この病気には自然軽快傾向がありますが、再発することが多いので注意が必要です。染み出しの部分が黄斑の中心(中心窩)から離れている場合は、レーザー治療が行われることもあります。レーザー治療には、回復までの期間を早めたり再発を予防したりする効果がありあます。染み出し部分が中心窩に極めて近い場合、レーザー治療はできないので内服薬による治療が一般に行われます。

   


加齢黄斑変性

■はじめに

加齢黄斑変性は、主に高齢者の失明原因となる重要な病気の一つです。健診でこの病気が早期に発見されることもあります。今まではあまり有効な治療法はありませんでしたが、近年、新しい方法が試みられるようになり、早期発見・早期治療によって視力低下を最小限に抑えられる可能性が期待できるようになってきました。

■網膜、黄斑、脈絡膜

黄斑とは、光を感じる神経の膜(網膜)の中央にある、物を見るために最も敏感な部分です。網膜の中でひときわ黄色く観察されるため、昔から黄斑と呼ばれてきました。脈絡膜は網膜よりさらに外側に位置しており、血管が豊富に存在し、網膜の一部を栄養する役割を担っています。

■加齢黄斑変性とは

黄斑が荒廃する(変性を起こす)病気です。脈絡膜から異常な血管(新生血管)が生えてくることが原因で起こる滲出型と、新生血管が関与せずに黄斑そのものが変性してくる非滲出型の二つのタイプがあります。滲出型は急激な視力低下を起こし、失明原因となる難治性の病気の一つです。非滲出型の場合、病状の進行は緩やかで、滲出型と比較すると視力低下の程度も軽度であることがほとんどです。加齢黄斑変性というと、通常は滲出型を指すことが多いので、以下では滲出型について解説します。

■加齢黄斑変性の症状

初期はものがゆがんで見える変視症や左右の眼でものの大きさが違って見えるなどの症状を自覚する場合が多いのですが、新生血管が破裂して黄斑に出血を起こすと、突然の視力低下、特に中心が見えにくいという症状が出現します。

■加齢黄斑変性の検査

病気の診断・程度判定・最適な治療を考えるうえで多くの検査が必要ですが、眼底検査と蛍光眼底造影検査の二つが特に重要です。蛍光眼底造影検査は、造影剤という検査用の薬を注射し、網膜や脈絡膜の血液の流れを把握する目的で行われ、新生血管の位置をつきとめたり病状の程度を判定したりすることが可能です。その他、主として脈絡膜の血液循環を調べるための特殊な造影検査もあります。

■加齢黄斑変性の治療

レーザーによる治療や、場合によっては手術が行われますが、十分な成果が得られないことが多いのが実情です。近年、経瞳孔温熱療法や光線力学療法などといった新しい治療法が一部の施設で試みられ始めており、この病気の予後の向上が期待されるようになってきています。

   


網膜色素変性

■網膜色素変性とは

網膜色素変性は、眼の中で光を感じる組織である網膜に異常がみられる病気で、4000〜8000人に1人の割合で起こるといわれています。遺伝が関係して発病する場合が多いのですが、遺伝が全く関係せずに発症する場合もあります。

■網膜色素変性の症状

特徴的な症状として、夜盲(暗いところで物が見えにくい)があり、進行すると視野が狭くなってきます。続いて視力低下を自覚するようになります。基本的には進行性の病気ですが、病状の進行速度には個人差がみられます。さらに症状の起こる順序にも個人差があり、最初に視力が低下してから夜盲を自覚する人もいます。

■網膜色素変性の治療

網膜色素変性に対しては、残念ながら根本的な治療法がありません。しかし、症状の進行を遅らせる方法として、サングラスの装用やビタミンA・循環改善薬の内服などがあります。さらに、遺伝子治療・網膜移植・人工網膜など、この病気を治療するための研究がさかんに行われており、将来の治療法として期待されています。

■網膜色素変性の医療費助成制度について

網膜色素変性は、厚生労働省の事業のひとつである医療費助成制度の適応疾患です。矯正視力が0.6以下で視野の障害がある場合、ご本人の申請があれば医師が難病患者診断書・網膜色素変性臨床調査個人表を記載します。それを管轄の保健所に提出し、基準を満たすと判断されれば医療費の助成を受けることができます。詳しくは担当医に御相談ください。

   


網膜色素変性

■網膜色素変性とは

網膜色素変性は、眼の中で光を感じる組織である網膜(図)に異常がみられる病気で、4000~8000人に1人の割合で起こるといわれています。遺伝が関係して発病する場合が多いのですが、遺伝が全く関係せずに発症する場合もあります。

■網膜色素変性の症状

特徴的な症状として、夜盲(暗いところで物が見えにくい)があり、進行すると視野が狭くなってきます。続いて視力低下を自覚するようになります。基本的には進行性の病気ですが、病状の進行速度には個人差がみられます。さらに症状の起こる順序にも個人差があり、最初に視力が低下してから夜盲を自覚する人もいます。

■網膜色素変性の治療

網膜色素変性に対しては、残念ながら根本的な治療法がありません。しかし、症状の進行を遅らせる方法として、サングラスの装用やビタミンA・循環改善薬の内服などがあります。さらに、遺伝子治療・網膜移植・人工網膜など、この病気を治療するための研究がさかんに行われており、将来の治療法として期待されています。

■網膜色素変性の医療費助成制度について

網膜色素変性は、厚生労働省の事業のひとつである医療費助成制度の適応疾患です。矯正視力が0.6以下で視野の障害がある場合、ご本人の申請があれば医師が難病患者診断書・網膜色素変性臨床調査個人表を記載します。それを管轄の保健所に提出し、基準を満たすと判断されれば医療費の助成を受けることができます。詳しくは担当医に御相談ください。

   


緑内障

■はじめに

緑内障は我が国における失明原因の上位を占めており、常に大きな問題として取り上げられています。以前の調査によると、40歳以上の緑内障患者は推定3.56%とされておりましたが、最近行われた大規模な調査では、これよりさらに多くの人が緑内障に罹患していることが分かりました。しかも緑内障があるのにもかかわらず、これに気付かずに過ごしている人が大勢いることも判明しました。
最近の緑内障の診断と治療の進歩は目覚しく、以前のような「緑内障=失明」という概念は古くなりつつあります。現代医学を駆使しても失明から救えない極めて難治性の緑内障が存在することも事実ですが、一般に、早期発見・早期治療によって失明という危険性を少しでも減らすことができる病気のひとつであることは間違いありません。

■房水と眼圧

房水とは目の中を循環する液体のことで、毛様体で作られて、虹彩の裏を通過して前房に至り、線維柱帯を経てシュレム管から排出され、眼外の血管へ流れてゆきます。この房水によりほぼ一定の圧力が眼内に発生し眼球の形状が保たれます。この圧力のことを眼圧と呼びます。

■眼圧の正常値

正常の眼圧は10~21mmHgとされています。しかし、これは健康人を対象とした調査に基づいて統計的に求められた値であって、この範囲にあるからといって緑内障にならないとは言いきれません。

■緑内障の定義

緑内障とは、視神経乳頭の異常と特徴的な視野の変化の両方あるいはどちらかがあり、眼圧を十分に下げることで視神経障害の改善あるいは進行を防止できる可能性のある病気と定義されています。古くから、眼圧が上昇することで視神経が障害される病気として理解されてきました。しかし、眼圧は正常の範囲にありながら、同様の視神経障害がおこるタイプの緑内障(正常眼圧緑内障)が存在し、大きな社会問題として取り上げられたことは記憶に新しい方も多いはずです。

■緑内障の症状

見える範囲(視野)が狭くなる症状が最も一般的ですが、初期は視野障害があっても全く自覚しないことがほとんどです。多くの場合、病気の進行は緩やかなので、かなり進行するまで症状に気付かないこともあります。視野障害が進行した場合は、視力が低下したり、場合によっては失明することさえありえます。急激に眼圧が上昇した場合は眼痛・充血・目のかすみのほか、頭痛や吐き気を自覚することもあります。

■緑内障の分類

(1) 原発開放隅角緑内障

線維柱帯が目詰まりを起こし、うまく房水が排出されないために眼圧が上昇し、視神経がその圧力に負けて障害されるタイプの緑内障です。このうち、眼圧がいわゆる正常範囲にありながら視神経が障害されるタイプの緑内障を正常眼圧緑内障といいます。正常眼圧緑内障では、視神経の血液循環が悪いために、通常では緑内障を起こさない程度の眼圧でも視神経が障害されるのではないかと考えられています。

(2) 原発閉塞隅角緑内障

隅角が狭くなり)、房水の排出が極度に障害されるために眼圧が上昇するタイプの緑内障です。急激な眼圧上昇を来たすこともあり、これを一般に急性緑内障発作と呼びます。

(3) 続発緑内障

あらかじめ眼や全身に何らかの病気があり、それが原因で眼圧が上昇するために起こる緑内障です。開放隅角の場合もあれば、閉塞隅角の場合もあります。

(4) 発達緑内障

生まれつき隅角に異常があるタイプの緑内障です。生まれた直後から眼圧が高い場合、眼球そのものが大きくなることもあり、昔から、俗に「牛眼」と呼ばれています。

■緑内障の検査

緑内障を診断したり治療経過の良し悪しを判断するには、多くの検査が必要です。

(1) 眼圧検査
(2) 隅角検査
 主に診断のために行う検査で、専用のコンタクトレンズを用いて行います。
(3) 眼底検査
 視神経の障害の程度を判定するために行う検査です。視神経の眼球の出口(視神経乳頭)には、小さなくぼみがあり、緑内障ではこのくぼみが拡大します。健康診断などでは、よく「視神経乳頭陥凹拡大(ししんけいにゅうとうかんおうかくだい)」と判定されます。
(4) 視野検査
 見える範囲を調べる検査です。緑内障の進行具合を判断するために、最も重要な検査です。

■緑内障の治療

緑内障は、眼圧を下げることができれば、その進行を防止したり、遅らせたりすることができる可能性のある病気です。正常眼圧緑内障でさえも、眼圧をさらに下げることで病気の進行を遅らせることができる可能性があります。ただし、ひとたび障害されてしまった視神経は、残念ながら回復することはありません。また、どんなに手を尽くしても進行を止められない緑内障もあります。しかし、早期に緑内障を発見できれば、言い換えれば、まだ視神経の障害が軽いうちに手を打つことができれば、失明に至る危険性はぐっと少なくなります。治療方法としては、薬物療法・レーザー治療・手術がありますが、すべての緑内障に対して同じ治療効果があるのではなく、緑内障のタイプやそれぞれの人に適した治療方針を決定してゆくことがとても重要です。

(1) 薬物療法

多くの緑内障では、薬物療法が治療の基本となります。現在では、さまざまな薬効を持った点眼薬が発売されており、緑内障のタイプ・重症度・眼圧の高さなどに応じて処方されます。一種類の目薬だけで効果が少ないと判断された場合は、複数の目薬を組み合わせて処方されます。また、眼圧を下げる飲み薬もありますが、全身の副作用が強く出ることがあり、内服できない場合もあります。

(2) レーザー治療

レーザー治療には主に二つの方法があります。ひとつは、虹彩(いわゆる茶目)に孔を開けて、眼内の房水の流れを変えるというもので、多くの閉塞隅角緑内障がこの方法によって治療可能です。虹彩に孔を開けるときにレーザーを使用します。もうひとつは、線維柱帯に照射することで房水の排出を促進するためのレーザー治療です。一部の開放隅角緑内障に効果があります。レーザー治療は外来で行うことができます。

(3) 手術

薬物療法やレーザー治療が功を奏さなかった場合に行われる治療です。大まかには、房水を眼外に染み出すように細工をする手術と、線維柱帯を切開して房水の排出をたやすくしてやる手術の二つがあります。緑内障の手術方法は年々改良が進み、治療成績もかなり改善されてきました。

   


視神経症

■はじめに

視神経は、眼球で集められた物の形や光の情報を脳に伝える電線の役割をしています(図1)。この電線になんらかの障害をおこす病気を視神経症と呼びます。原因がはっきりしていることもありますが不明な場合も多くあります。

■視神経症の症状と診断

急激な視力の低下や視野の真ん中が見えないといった中心暗点(図2)が主な症状で、頭痛・眼球運動痛(眼球を動かすときの眼の痛み)・眼の圧迫感などを伴うこともあります。視神経症の原因を探るために、視力検査・眼底検査・視野検査のほか、MRI検査・血液検査・髄液検査などが必要に応じ行われます。

■視神経症の分類・治療

(1) 特発性視神経炎

視神経の眼球への入り口(視神経乳頭)が炎症を起こして腫れる病気で、原因は未だに不明です。年齢は若年から中年に多く、やや女性に多い傾向があります。治療にはステロイド薬やビタミン剤の内服や点滴が主に行われますが、自然回復傾向のある病気です。

(2) 球後視神経炎

眼底検査で視神経に異常がみられないにもかかわらず、視神経症の症状が出現するものです。球後視神経炎を起こす代表疾患に多発性硬化症という病気があります。多発性硬化症は20~40歳代の成人に多くみられます。原因として自己免疫異常やウイルス感染の関与が考えられていますが、未だに不明です。眼の障害だけでなく、運動失調・感覚障害・痴呆などが出現することがあります。急激に発症することが多く、その後、症状は軽快と悪化を繰り返します。治療にはステロイド薬の内服や点滴が行われます。

(3) 鼻性視神経炎

 視神経と副鼻腔は極めて隣接した解剖学的位置関係にあります。そのため、副鼻腔で起こった炎症が視神経にまで及んだり、副鼻腔にできた腫瘍などが視神経を圧迫することなどによって視神経障害が起こったものを鼻性視神経症と呼びます。時に耳鼻咽喉科での緊急処置を要することもあります。

(4) 虚血性視神経症

視神経を栄養する血管の循環障害がきっかけで起こります。原因として血管の炎症によるものと、高血圧・動脈硬化・糖尿病などが基礎にあって血液の流れが悪くなる場合の二つが考えられています。治療には副腎皮質ステロイド薬、血管拡張剤、ビタミン剤などの内服や点滴が行われますが、予後が不良なこともあります。

(5) 中毒性視神経症

神経に毒性のある物質の摂取や暴露により発症する視神経症です。視神経障害の原因となりうる毒物は多くありますが、代表的なものは、タバコ・アルコール(特に戦時中、メチルアルコールの摂取により失明者が多発したことは有名です)・結核治療に用いられる薬物・シンナー・農薬などです。治療の第一歩は、これら視神経障害の原因となる物質との接触を断つことです。

(6) 遺伝性視神経症(レーベル病)

視神経萎縮を起こす遺伝病です。10〜30歳代の男性で、両目の急激な視力障害で発症します。短期間のうちに視神経萎縮に至るといわれています。

   

   

化学眼外傷

■化学眼外傷とは

化学眼外傷とは、なんらかの化学物質、たとえば洗剤・有機溶剤・パーマ液などが誤って眼に入ってしまった結果として発生します。化学物質によって、受傷後の経過は異なりますが、時に失明に至るようなケースもあります。

■化学眼外傷の症状

化学眼外傷の受傷直後は、結膜や角膜といった眼球表面の組織に炎症が起こります。なかには角膜の表面が完全に剥がれてしまったり、角膜全体がスリガラスのように濁ってしまうこともあります。特に、化学物質がアルカリ性だった場合、眼球表面の障害にとどまらず、化学物質が角膜を透過して眼の内部にまで障害を及ぼすことさえあります。
軽症の場合は治療により後遺症を残さずに回復ことがほとんどです。しかし、重症の場合、眼球とまぶたが癒着してしまったり、角膜が白く濁ってしまうなどの後遺症を残すことがあります。また、後になって緑内障や白内障などを引き起こすこともあります。

■化学眼外傷の治療

化学物質が眼に入ってしまった場合、医療機関を受診する前に、その場でなるべくはやく、眼を開けたまま水道水などの流水で10分以上洗眼する(目を洗う)ことが必要です。一般に、化学物質が眼に接触している時間が長ければ長いほど眼の障害は重症となります。傷ついた眼を開けたまま洗うのは痛いので非常に難しいのですが、できるだけ化学物質を洗い流すことが重要です。洗眼が済んだら、ただちに眼科を受診してください。
その後の治療は、化学物質の種類・化学物質が眼に接触していた時間・目の障害の程度などによって異なります。軽度であれば通院による治療で後遺症もなく回復ことが可能です。重症であれば入院のうえ手術を要することもあります。